遺産分割と代償金
遺産分割においては、代償金の支払いを避けて通れないような難しいケースも見受けられます。
その多くは、「遺産分割の対象が不動産である場合」、「特定の相続人が親の財産を使い込んでいた場合」などがそれにあたります。ここでは前者の「遺産分割の対象が不動産である場合」についてご案内致します。良くあるケースは、自宅不動産が1つだけで現金預金などの金融資産がほとんど無い場合で、結局は同居している相続人が相続するケースです。これは下記のケース①でご紹介いたしますが、一般的にはこちらが一番多いと思います。
そして、ケース②では遺産分割の話し合いが、遺産分割の対象となる不動産に住んでいる相続人の思い通りにはいかず、代償金の支払いが必要となるケースについてご紹介いたします。是非とも、ご参考ください。
ケース① 相続人の単独所有で、終了となるケース
- 父親が他界して相続開始。母は既に亡くなっており、相続人は子供3人。
- 父の住んでいた自宅不動産に相続人である長男夫婦が同居していた。
- 金融資産は200万円ほど。葬儀や供養の支払に使い、100万円の残金のみ。
- 自宅不動産の評価は、2500万円(土地2200万円・建物300万円)。
こういったケースで、相続財産の総額は2,700万円。相続人は3人ですから、それぞれの法定相続分は900万円ずつ。この遺産が現金でしたら、気持ちよく分けられますが、不動産が遺産の大半である場合はそうもいきません。
こうした場合、大半のケースでは、同居していたお子様が亡くなられた親御さんの面倒を見ていた場合なども多く、同居の相続人に不動産を相続してもらい、残ったいくらかの預貯金だけ他の相続人が相続して、法律上の相続手続きを完了させる場合が多いと思います。中には、大半を長男が相続するので、お墓の管理や供養などに掛かる費用も長男が負担して下さいね、と話をまとめるケースも見られます。
いずれにしても、こうしたケースのほとんどは同居していた方が、自宅不動産を相続してそのまま住み続ける場合が多いかと思います。
ケース② 遺産分割の話し合いで、代償金を支払う事になったケース
- 父親が他界して、相続人は全部で3名。妻(65)と長男(35)。それと父親の前妻との子供1名。※面識はあまり無い
- 父名義の自宅不動産に、現在も妻と長男が住んでいる。
- 金融資産は200万円。自宅不動産の評価は3400万円。
- 遺産総額は、3600万円。
この上記のようなケースで、妻と長男は、そのまま自宅に住み続けたいが、面識がほとんど無い相続人(父親の前妻の子)から法定相続分である遺産の1/4の相続したい旨の連絡を受けていました。法定相続分で考えると、妻が1800万円、子供が900万円ずつとなるため、あまり面識の無い相続人にも法律通りであれば、900万円相当を支払う必要がありました。しかしながら、住んでいる不動産が遺産の大半であるため、遺産からは相手側の法定相続分相当を支払う事ができませんでした。
このケースでは、長男は自宅不動産で母親と今後も同居していきたい希望があるものの、代償金として900万円も現金で一度に支払うことが出来ずに困っていた。長男は相手側に現金が200万円あるので、これでなんとか勘弁してくれないか?と打診するも合意してもらえず…。また相手側の意向は、相続トラブルにしたくないものの、法定相続分にちかい金額を検討してもらえないのであれば、仕方が無いので自宅不動産を売却してでも、きちんと対応したいという意向でした。
長男さんが分割で支払っても自宅を守りたいとの事だったので、ある程度、柔軟に対応いただける金融機関の遺産分割ローンをご紹介した結果、下記のような柔軟な遺産分割でまとまりました。
<金融機関の遺産分割ローンを活用して合意に至る>
- 一括で支払う代わりに、代償金を900万円ではなく、800万円で合意いただいた。※あくまで当事者同士のやり取り
- 今ある、200万円の現金は、そのまま相手側に渡す。
- 不足分の600万円は、銀行から融資を受けて一括で代償金をお支払い。
その前提で、不動産を母親が不動産を単独で相続する旨の遺産分割協議書に押印いただけることになった。
上記のケースは、相続紛争にしたくないという当事者同士の意向もあって遺産分割がまとまった事、遺産分割調停を回避できたなど、双方にとってメリットが大きい結果で遺産分割がまとまった事例です。
長男は、某銀行の遺産分割ローンを活用して代償金を支払い、自宅を売却しないで済んだので母親の生活を守ることが出来ました。しばらくは金融機関に月3万円ほどの分割での支払いがあるものの、自宅不動産が母親の単独名義となったため、将来、長男は唯一の相続人として3000万円ちかい不動産を結果として単独で取得できる事になりました。
遺産分割には様々なケースがありますが、ケースごとにどのような遺産分割協議書を作成するか、代償金についての記載をどうするかなど、非常に難しい場合もあります。記載方法によっては、後から贈与税が掛かってしまうケースもあります。まずは、実績のある専門家の無料相談を活用される事をお勧めいたします。
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